道に沿って新しい宅地の造成工事が今も進行する中、沢山の戸建住宅が完成し街並みが形成されている最中でした。建売と注文住宅が混在し、多くがハウスメーカーによる物でした。
和風の住宅、洋風の住宅、別荘風の住宅…と建主のこだわりや思い入れのこもった住宅が立ち並んでいます。形も色も材料もバラエティーに富み住む人の個性がそのまま外観に現れている感じです。販売中のハウスメーカーによる建売住宅もあり、各メーカーそれぞれが自社ならではの売りをアピールしていました。
私の感想。
住む人の個性、メーカーの販売競争。その結果だけで街並みができつつある。
その街並みは残念ながら美しいとは言い難い。
恐らくこの新しい街がこのまま出来上がった後、資産価値が上がることはないだろう。
大規模な宅地開発を行う事業者がルールを決めず、土地建物を売買する当事者が自由に建物を建てると、一つ一つの建物がどんなに素晴らしくても、人が羨むような、愛着の持てる街並みにはならないのだという事を思い知らされます。街の価値を決めるのは個々の建物の良し悪しだけでなく全体としてのまとまりであるように感じます。
そのような議論になると屋根の勾配を統一しようとか、色を統一しよう、などという話になりがちですが、そう単純な物ではありません。例えば1業者が単独で開発した街のように画一的な物だと反対に退屈だったり人為的な景観になったりします。魅力のある街は多様性に富みながら、何となくまとまっている。絶妙なバランスがとれているのが特徴だと思います。
もっとも最低限のルールや考え方、どのような街並みをめざそうというコンセプトが宅地を開発する事業者に無ければ、美しい街並みを作るのはやはり難しいと思います。
個性が強すぎないようにしてくれるのが木々です。木は建物を程よく隠しながら、多様な色形の緑で統一感を出してくれます。家以外の外構の要素はとても重要だと思います。囲障や擁壁の素材、門のデザインなどのセンスが良く、それぞれの敷地に共通点があると街並みに共通のコードが生まれまとまりを感じさせます。
宅地開発事業者は、宅地の造成が完成したら終わり、ではなく、その後形作られる街並みの姿にも責任を持つべきだと思います。街並みが地域を作りやがて社会を作ります。そこで生まれ育った人が将来の担い手となるのですから、街並みがそこに関係する人々の情緒に与える影響を考えると、誰かが真剣にデザインしなければならないと思います。
建築家や造園家によるチームが良い街に仕上がっていくよう誘導すべきではないでしょうか。
そのためにはまず、開発事業者や住宅メーカーが、また住む人自体がバラバラに好きな様にやっていてはまともな街が作れないという事に気付かなければならないと思います。
その第一歩として、今できつつある街並みが本当にこれでいいのか、疑問を持って欲しいと思います。