2014年4月5日土曜日

開口部について。(1)

建築の世界では主に窓について開口部、と表現します。
窓と言うと腰から上にあるものをイメージしますが、床からの掃出し窓や天窓なども有ります。
また、開口部には、外壁に取りつくドアやシャッターなども含まれます。それらの配置や形式の選定、材料、色などをどのように考えるかは、建物を設計する上でとても重要です。どんな建物にするのかを決定づける大きなテーマの一つです。

窓には採光、通風などの環境的機能があります。採光は屋内の照度や熱に関わります。また通風は夏場の風通しや換気に関係します。
また窓は、屋内から見える外部の景色、眺望と、その反対に外部からの視線や建物の外観に関わります。
構造面では、窓の取りつく壁は、全く窓がない壁に比べて相対的に弱くなります。
建物の構造については色々な解析手法があり、強ければいいという訳ではなく、建物全体についての強度バランスが重要です。ですから構造力学上合理的な窓配置を考えながら計画しなければなりません。

こうして考えると、窓の計画は様々な事を同時に考えて設計しなければならず、単に外観デザインのみで決定できるものではありません。住まう人が求める生活や設計する人の哲学により、仮に同じ間取りでも窓の計画は大きく変わり、全く違う建物になり得ると考えられます。
更に言うと、窓のことを考えながら間取りや断面を考えなければ良い建物にはならないでしょう。

私が建物を設計する場合、基本的に窓がない部屋は、たとえ部屋の用途が物置だったとしても、極力作りません。窓のない部屋は当然暗く昼間でもエネルギーを必要とし、空気がよどんで結露やカビの発生を招きますし、良いことは一つもありません。地下室を作る場合でもドライエリアを設け、外気に直接面する窓を設置します。

マンションなどではトイレや洗面室、浴室といった、臭気や水蒸気が発生する部屋に窓がない場合が多くあります。中部屋で狭い住戸の場合でどうしようもない事もあるとは思いますが、80㎡を超える面積の住戸や、角部屋の住戸でも、やはり窓がないケースを見かけることがいくらでもあります。そのような間取り図を見ると、設計者の哲学と能力を疑わずにはいられません。

戸建住宅の場合、階段室や廊下など、非居室にも採光と通風をとる努力をすべきです。
中廊下であっても、廊下と居間を仕切る壁にガラス窓を設けたりドアをガラスかまちの引き戸にするなど、真っ暗で空気が流れない空間を作らないよう、あの手この手で努力します。最上階なら天窓だって付けれるのです。

そのようにして出来上がった建物は、どこにいても明るく、屋外の時間的環境の変化を感覚的に感じることができる心地よい内部環境を得ることができます。天気の良い日はそれを感じ、雨降りの日はそれを感じる、といった事は人間がそこに暮らしていく上で大事な事に思います。
私の自宅は居間が2階にあり、吹き抜けになっているのですが、壁と屋根の間に窓を設けているため昼間は空の色や明るさの変化や雲の動き、雨の様子などが、夜は月や星の様子が視覚的に感じることができます。

デザインがいくらかっこよくても、じっと動かないものはすぐに飽きてしまうものです。自然の営みによって生み出される多様な変化と比べると、人間が考えた形はいくらレベルの高いものであってもそれらにはかないません。空間を構成する3次元の世界に時間的変化を加えてこそ、その場所に奥行や深みが与えられるのではないかと思います。

木々の揺らめきや羽ばたく鳥、海のきらめきや太陽の光の変化などを暮らしの中で体感できれば、環境や地球や宇宙について考えたり感謝したりすることも身近に感じられます。


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